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インドネシアRINJANI100 大会レポート(トレランポール13.6Pro使用)

大会レポート

株式会社ユーレックスの久保様より、
インドネシアRINJANI100の活動報告書をお送り頂きました。

2018年5月4日-5日 インドネシア・RINJANI100 参戦

種目: トレイルランニング(ウルトラトレイル)
距離: 100㎞ ワンウェイレース
獲得標高: 9200m 
参加者数: 約160名
完走タイム: 29時間21分47
結果: 総合5位 
使用機材: SINANO トレランポール13.6 Pro


コースマップ

コースマップ

【 アジア最難関、リンジャニ100 】

インドネシア・ロンボク島で開催される、アジアでも最も難易度の高い100㎞トレイルといわれる、リンジャニ100に参加してきました。
スタートはマップ右端のセナル村標高約600mから、22㎞でリンジャニ山頂3726mまで登りますが、
一度カルデラ湖へ約700m下りを含むため、最初の22㎞の獲得標高が約3800mという、非常に険しいコース設定です。
リンジャニ山頂通過後もプロフィールでは小さい山に見えますが、1800~2400mの非常に急登、急下りの連続で、非常にテクニカルな上り下りを繰り返すコース設定でした。
この100㎞のカテゴリーには、インドネシア、日本、中国、マレーシア、タイ、フィリピン、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリア、スイス、ロシアなど世界各国から約160名の参加者が集まりました。

リンジャニ山頂近く3000mからは非常に崩れやすい砂礫ルートとなり、⼀歩進んでも0.7歩下がってしまうようななかなか進めない難ルートで、3000m超の低酸素も加わりポールが必需と思われるセクションでした。
ポールで何とかずり下がることを食い止めつつ、頂上を目指します。
ここまでの登りも非常に険しく、スタート直後からひたすらSINANOの13.6Proを突き続け、のぼりも下りもできるだけ足の消耗をセーブすることができました。

【最高地点3726m リンジャニ山頂へ】


山頂付近の砂礫。60㎞、36㎞、27㎞のカテゴリーランナーも同じ時間帯に山頂に到着するため、
かなりのランナーであふれています。


約6時間50分かけて、リンジャニ山頂に到着。この時点で総合7位を告げられます。
23時30分にスタートし、ちょうど日の出の時間に山頂へ到着しました。
ここからの景色は形容しがたい絶景です。
壮大な火山のカルデラ湖、そしてロンボクの海、裾野のジャングル、センバルン村すべてを一望する360度のパノラマは本当に素晴らしい景色で、⼀瞬レースを忘れて景色に見入ってしまいました。
この20㎞で3726mから⼀気に約1000mまで標高を下げるため、どんどん気温が上がります。山頂付近は約5度でしたが、麓は約27度ぐらいまで上昇、これから中盤は熱さとの戦いです。
幸い天気は快晴のため、本当に素晴らしい景色が広がります。

【重要なのは、いかに下りを攻略するか】

山頂からは約20㎞にわたる長いテクニカルなダウンヒルが待ち構え、ここでの足の消耗をいかにセーブするかが非常に重要なポイントです。

下りでも着地の瞬間にポールを突き、足にかかるウェイトをできる限り軽減するように心がけて、下りを進みます。

非常に急でスリッピーな下りが続き、何度も転倒しかけますが、ポールでバランスを取り転倒を回避します。
火山灰の砂や砂利が大量に靴の中に侵入するため、一度止まって靴を開けると、大量に砂が出てきました。シューズが一気に軽くなります。

下りもペースをコントロールしながら、最小限の消耗で下ることができました。
下りきった場所の補給所はすでにかなり暑く、水を浴びて、塩分補給のためカップラーメンを少し食べます。

補給所を過ぎると、次の登りへ突入です。宿泊していたホテルのすぐ裏にそびえる山で、山頂は約1800mと低いですが、強烈な直登です。普段はほとんどハイカーも入らない山のようで、半分やぶ漕ぎのような細くて急峻な登りが続きます。まだまだ半分も来ていないので、極力消耗しないようにペースをコントロールして、進みます。

足の消耗を抑えるために、シナノの13.6ポールをめいいっぱい使い、腕の力を使って足を温存します。

【リンジャニよりも厳しい崖のような下り】


2つ目の山の山頂を過ぎると、素晴らしい絶景とともに、とんでもなく急な下りが現れます。
今まで日本の大会、いや海外の大会でもこれほどまでに急な下りは見たことがありません。

これだけ急な下りだと、足の筋力は確実にダメージを受けていき、後半厳しくなることは明白です。シナノの13.6Proがしなるほどに必死に下り斜面に突き立てて、ブレーキを駆けつつ崖のような下りを下ります。何度も滑って転倒しそうになりますが、そのたびに13.6Proに救われます。

やっとの思いで、激烈な下りを下りきると、しばし田園の中の林道を進み、50㎞地点のドロップバックエイドに到着します。エイドに到着するとイタリア人の先行していた選手がエイドにストップしています。どうも体調を崩しているようです。
気温が上がると脱水や食欲不振でハンガーノックになり体調を崩す選手が増えます。
実は雨天や寒い日のほうがウルトラトレイルの完走率は上がります。なので、快晴の今日は景色は最高ですが、コンディションとしては実は厳しいコンディションです。

ここにはあらかじめスタートで預けた、ドロップバックを受け取ることができ、自分の用意した食料や着替え、スペアシューズなどを交換できます。

ここでいかにしっかり後半に向けて体制を整えられるかが、非常に重要です。

まずエイドのスタッフにカップラーメンの準備をお願いし、持参した「カレーメシ」にもお湯を入れてもらいます。私は100マイルや100㎞のロングレースではあまりジェルが食べられない体質で、こうしたしっかりした食事をなるべくとるように心がけています。

カップラーメンとカレーメシができるまでの間、ソックスを履き替えます。もうリンジャニの火山灰と途中の川渡でシューズもソックスもドロドロです。足も火山灰で真っ黒。このままで走り続けると火山灰の砂がすれて足の皮がベロっとはがれてしまうため、できる限り落とし、水で洗い、大量にワセリンを塗りたくります。どんなに筋力が元気でも致命的な足の豆や水ぶくれができてしまうと、痛みで大幅にペースダウン、体のバランスも崩れひざ痛などを併発してリタイヤに追い込まれるリスクがあります。 なので足裏などのケアは多少時間がかかっても、ここでしっかりしておく必要があります。

ワセリンを大量に塗り、新しいソックスに履き替え、カレーメシとカップラーメンを食べます。
この時は食欲も正常で、後半上げていけるのではないかと考えていました。

唯一気がかりは、日焼け止めを塗っていたものの、大量の汗などで流れてしまったか、それ以上に日差しが厳しく、全身が激しく日焼けしてきておりヒリヒリしています。
日焼けも体力を消耗するため、本当はなるべく防がなくてはなりませんが、反面熱さのためになるべく薄着でいたいという思いもあり、なかなか難しい判断です。

ここまでは体調もよく、消耗も比較的少なく来れているという印象でした。すべての補給を行い、後半用の補給職、ドリンクを装備し50㎞のドロップバックエイドを後にします。
先に入っていたイタリア人は、まだエイドにとどまっており、この時点で6位に上がっていたはずです。

そして3つ目の NANGIの登りに差し掛かります。このころ最も暑い時間帯となり、体に熱がこもり始めます。少し補給を食べすぎてしまったのか、おなかが張って今一つリズムよく上ることができません。この登りも激烈な急斜面と、普段はほとんど人が通らないやぶ漕ぎでポールが使いづらく、足が消耗します。
そしてとにかく日影が全くなく、背後から厳しい日差しが照り付けます。

麓から中腹は風がなく、特に熱く感じます。風が吹けば比較的乾燥しているため涼しいのですが、風がないととにかく熱がこもってつらくなってきました。
積極的に水分補給し、脱水にならないように細心の注意を払います。

二の腕がぴくぴくと痙攣し始めます。これは私の脱水、低血糖の危険信号です。でもさっきしっかりカレーメシもラーメンも食べたのに、おかしい、そう感じていました。エネルギーはまだ足りているはずなのに、二の腕が痙攣してくるのはおかしいです。

だんだんと体調が悪化しているのが感じられます。ペースを落としうまく切り抜けようと試みます。
目の前にそびえたつ急峻な稜線の直登にずっとコースマーキングがなびいているのが見えます。
全く日陰はありません。太陽がぎらぎらと真上から照り付け、たまらずボトルの水を浴びます。

ここまで順調に来ていた自分ですが、ここから苦しい時間が到来することを察知していました。10時間を超えるウルトラトレイルでは、必ず調子のよいランニングハイに近い状態の時間帯と、非常に苦しむスローダウンする時間帯が必ずあります。
その厳しい時間帯が迫っていることを察知します。

ここでさらに無理にプッシュすると、完全に体調を崩し、ロングストップを強いられることになることを経験上知っているので、いかに最小限のペースダウンでこの厳しい時間を乗り切るかがウルトラトレイルの勝負どころでもあります。

この3つ目のNangiの登りで相当ペースを落とします。あまりの暑さに何度も止まり、体の熱が下がるのを待ちながら、少しずつ進みます。後ろからはまだ誰も来ません。

やっとの思いで山頂につくと、さらに腕のしびれがひどくなり、完全に低血糖の症状です。
携帯していたカルピス原液をチオビタで割ったスペシャルドリンクを飲み、何とかエネルギーを補給しますが、固形物は一切食べたくないという状態に陥ります。

この食欲が著しく減退した状態は、かなり状態が悪い証拠です。今まで何度もこの状態でロングストップやリタイヤに追い込まれました。

さらに追い打ちをかけるように、ここの下りがありえないほど急な崖の下りでした。
斜面の木や草にしがみついて下らないと滑落してしまう、もはや走ることなど全くできない崖のような下りが続きます。

吐き気が止まらなくなり、ついに先ほどのエイドで抜かしたはずのイタリア人にも抜き返されます。おそらく相当私の顔色が悪かったようで、「アーユーOK?」と聞かれます。

「胃がやられてる」と伝え、でも何とかいけると伝えます。

体調はどんどん悪化し、とぼとぼ歩いて下っていると、さっき抜かしたイタリア人が音楽を駆けながら横になっています。彼も同じように満身創痍でした。

今度は自分が「アーユーOK?」と聞き返し、彼も「ノープロブレム」と答えますが、さっき抜かしたばかりでここに横になっているのは「メニープロブレム」のはずですが、これがウルトラトレイルです。

そして彼を抜かし、5分ほど進んだところで、今度は私はすべてを吐き出してしまいます。
地獄の時間です。ついに内臓が限界を迎え、胃の中が空になるまで何度も吐きます。
苦しさで勝手に涙がボロボロ溢れますが、もはやこれにも慣れています。

全部出し切ると、冷静に結構胃の中には食べ物が入っていて、エネルギーが足りないのではなく、胃が栄養を吸収できていない状態だったことがわかります。
全部吐いたら、意外とすっきりしてさっきよりペースを上げて走り出すことができました。

やっと長い長い激烈な下りを下りきると、今回我々をサポートしてくれているIPONが麓に来ていました。

IPONは私の補給食などを持っています。IPONに合流しすぐに水をかけてもらいます。
「暑い、暑すぎる!」とにかく体を冷やさないと体調が戻らないと判断。

ちょうど近くにいた商店の店主さんが「氷ならあげられる」と氷をくれました。
首筋や足全体をとにかく氷で冷やします。
食べれそうなものを少しでも補給し、全部出てしまった補給を取り戻します。

ここで中国の選手に抜かされます。

【 第3エイドで大観衆に囲まれる 】

個々のエイドは小さな村に設置されており、普段はまず外国人など訪れない、小さな集落のためものすごい数の村民が観戦に来ていました。

私は体調が悪すぎて、とにかく少しでも食べ物を口に入れることで必死で、「やたら具合の悪そうな日本人を見たよ」ときっとこの村での今日のビックニュースになっていたことでしょう。

このウルトラトレイルというスポーツの魅力の一つは、こうした大会でもなければ決して立ち寄ることも無かったであろう小さな村などに立ち寄り、一生出会うことがなかったはずの現地の村人たちと、こうして出会うことができることも、このスポーツの大きな魅力です。

大観衆の視線を一身に浴びながら、必死にふかし芋を食べる私、これも今となっては非常に貴重な体験でした。

一度このような内臓トラブルを起こすと、完全に復帰できるには相当な時間がかかります。
今食べたものもなかなか吸収しないはずなので、気持ちは走りたいが、当分は走らずに行くしかありません。

走ると内臓がシェイクされてしまい、再度嘔吐するリスクがあるからです。
ここはとにかく歩いて症状が収まるのを待ちます。しかしなかなか胃が栄養を吸収していく気配が感じられません。

4つ目の登りは非常に長く、ピークの後もアップダウンを繰り返す難しいセクションと聞いていたので、どうしてもここでの立て直しが必要と感じ、60㎞すぎの登り初めで、ついに日陰に横たわり、10分休むことにします。

とにかく一度完全に心拍を下げて、体の熱をできる限り落とさない限り、この先の登りで動けなくなると判断したからです。

せっかく6位まで上げた順位も落ちていくだろうと、覚悟しました。しかしとにかく何としても完走はしたい、せっかくポールをご提供いただいたSINANO様にも使用1レース目でリタイヤは絶対にできないと思い、とにかく体調が改善するのを祈りながら10分間横になります。

何とか心拍も落ち着き、再び進み始めますが、やはり暑い。ここも全く日陰がなく、急登がまっすぐ上に伸びています。時々水をかぶりながら一歩一歩進みます。「あつい、あつい」何度もそう呟きながら、標高を上げれば涼しくなるかもしれない、そのためには進むしかない、そう言い聞かせてストックにしがみつきながら、進みます。

山頂にやっとの思いで着くと、一気に風が吹き抜け今度はいきなり肌寒くなってきました。
なんて難しい天気なんだ。。 これまで暑くてたまらなかったのに、今度はすぐにアンダーウェアを取り出し着替え、さらにウィンドベストまで着込みます。
この地方は乾燥しているため、日が陰り始めると一気に気温が下がり始めます。

しかしやっと極暑地獄から解放され、やっと少しペースが上がります。
山頂と思ったチェックポイントを過ぎて目の前のピークを越えれば、次のエイドかと思いきや、頂上に着くとさらに2つ山が連なっています。あの2つの山を越えなければ次のエイドには着きません。 やっとの思いでその2つを超えると、なんとさらにものすごい下りの先にもう一山絶壁のような山がそびえたっていました。唖然,茫然、「まじかよ。。。」とつぶやき、崖のような下りを一歩一歩おります。

両足の親指の爪が完全に死んでいる感触があります、足裏にもまめができていそうです。下りが急すぎて、シューズの中で足がスライドしてしまい、普段あまり足のトラブルはない私でも、今回はかなりの痛みを伴っています。 また大腿四頭筋も崩壊し、下りの度に大腿に激痛が走ります。

この第8~第9エイドは大会中最もエイド感覚が長い13㎞で、ついに2回目の夜がやってきます。
気温は一気に下がり始め、長袖のアンダーウェアも着込みます。さっきまで暑くて水をかぶっていたのに、今度は防寒装備です。

2回目の夜は精神的にもかなりきつくなってきます。すでに体調不良でスローダウンしているため、よけいにエイド間が長く感じます。いくつも繰り返すアップダウンを超え、やっと下りかと思ったら、これまでで最強クラスの絶壁のような下りが現れます。

ヘッドライトに反射するコースマーキングが真下に見えます。「ありえない・・・」愚痴がこぼれます。ここにきてこの壁のような下りはダメ押しです。落ちるように必死に木の根っこや、枝にしがみつきながら転倒して滑落しないように下ります。トレイルもガレていてとにかく進みづらく何度も転びかけます。 本当にやっとの思いで第9エイドにたどり着きます。
真っ暗になった第9エイド、先行していた一人のランナーが止まっていました。
私から前のランナーは全く見えていなかったので、かなり長いことこのエイドにストップしていたようです。聞くと3位で進んでいたノルウェーの選手です。

「このレースの下りはクレイジーだ」
そう嘆いていました。激しく共感です。私自身もこれほどにテクニカルで絶壁な下りの連続の大会は見たことがありません。私自身も完全に打ちのめされ、また内臓トラブルでほとんど補給が取れていなかったため、このエイドで倒れこみます。

とにかく食べなければ進めない。そう思い無理やりカレーメシとカップラーメンを再び用意してもらいます。

出来上がるまで横になっていると、ドクターが足をマッサージしてくれます。
もうすでに18時間位以上走ってきた足は相当臭かったはず、それなのにそんな泥まみれの足をマッサージしてくれます。 「ああ、ここでやめたらどんなに楽だろう」

そんな気持ちが芽生えます。すると、このエイドでストップしていたノルウェーの選手が「車でゴールまで送ってほしい」とエイドのスタッフへ告げます。 3位だったのに、ここでリタイヤ決意したようです。
「もうこれ以上進めない」
彼はそう言い残して、この75㎞のエイドでリタイヤしました。

それを見て気持ちが揺らぎますが、あと25㎞、ここでやめたらここまで来た苦労もすべて無駄になる。絶対にやめない。その気持ちだけは持ちこたえます。

何とかカレーメシとカップラーメン少々を食べることができ、先に進む決意をします。20分はこのエイドに止まりました。

エイドアウトしようとシューズのひもを結んでいると、抜きつ抜かれつしてきていたイタリア人の選手がエイドインしてきました。 「彼には負けたくない。」
なぜかそのモチベーションだけは残っていました。

彼がエイドインすると、私は「テリマカシー(ありがとう)」とエイドのスタッフ皆さんに伝えてエイドアウトします。

ここからはわざわざロードでしばらく下らされて、標高を下げてから再度2000mまで登り返す再度のラスボスの登りです。

一昨日ロンボク空港からセンバルン村に車で向かうときに通ったジャングルの峠道です。車で通った時は何度も一速に入れた急坂でしたが、これまで私が走ってきた道に比べたら、舗装路はまるで平地のように感じます。普段は嫌いな舗装路も、この時ばかりは「なんて走りやすいんだ。少しでも長くこのロードが続いてくれれば、楽に残りの距離を減らせることができる」
そんな風にさえ思えます。

足は激痛ですが、ロードなら走れるので、少しでも早くゴールできるように走り続けます。
「こんなに下らなくてもいいのに、、、」というほどに、延々下らされます。

さっきまで寒かったのが、標高を相当下げたため、暑くなってきます。
しばらくロードを進み続けると、たくさんの大会スタッフが登りに向かうトレイルの入り口で応援してくれます。

ここまでまだ5人しかランナーが来ていないので、相当暇だったでしょう。みんな大騒ぎで私を応援してくれます。応援の声はパワーをくれます。

なぜこののぼり口にこんなにたくさん人がいる理由はわかりませんでしたが、8人ぐらいの少年たちと一緒に記念撮影し、ついにラスボス的登りのアプローチに入ります。

マーキングは非常にたくさんしてあり、延々とリフレクターがキラキラと反射します。
この登りは1200mあたりから1900mまで約700mアップするはずで、約5㎞上り続けるはずです。
最初は上りやすい斜度でしたが、すぐにその希望は打ち砕かれます。
再び崖のような急斜面が現れ始め、枝や木の根っこをつかんで上るセクションが頻発します。
最後の最後までまったく楽をさせてくれません。

ライトに反射するマーキングがどんどん上に向かって連なっています。山の輪郭も道も漆黒の闇に包まれて全く見えませんが、リフレクター付きのマーキングの反射する光でこの先がどんなコースかがわかります。ひたすら上に向かってどんどん傾斜がきつくなっていることをリフレクターが教えてくれます。

その絶望的なマーキングのきらめきにがっかりしながら、「とにかくどんなコースであれ進むしかここから解放されるすべはない」そう何度も自分に言い聞かせて突き進みます。

マーキングが見えなくなる場所、そこがおそらくこの登りの頂上です。
漆黒の闇の中、よーく目を凝らすとこの山の斜面と空の境界線がうっすらと見えます。
そして今自分が昇っている山の斜面がどれほど急斜面かを知り、怖気づきます。

限りなく90度に迫るような激斜面です。ラスボスのピークと思われる場所にはテントが張ってあり、大会スタッフが私の通過をチェックします。

「今5位だよ」と知らされます。

あれ?気が付かないうちにまた一つ順位が上がっている。もうこのころには意識が朦朧とし始めており、なぜ自分が5位なのかよく理解できずにいました。

あたりは漆黒の闇だったが、満天の星空と、明るい半月が顔を出し始めていた。前にも後ろにももはや選手の気配はなく、ひたすら光に反射するリフレクターのマーキングの光を追いかけて、体に鞭を打ち続けとにかく進みました。

「早くゴールしたい」「次のエイドはまだが」

私はちょうど1か月前に、クロアチアのウルトラトレイルワールドツアー「イストリア100マイル 167㎞を 26時間台で完走していました。 総合34位でアジア人選手としてはトップでした。
しかしこのリンジャニ100は100㎞でありながら、すでにその26時間を過ぎようとしています。
67㎞も短いのに、それよりも遥かに長い時間がかかっています。

もし今、「あと67㎞あるよ」と言われたら、迷わずリタイヤしただろう。
山中に張られたテントに近づくと、そこが第9エイドでした。
私はもう残り10㎞ぐらいだと思っていたら、あと17㎞と言われて、気を失いそうになりました。
睡魔が迫っているのを感じていたので、温かいコーヒーをいただき、クッキーを数枚食べた。

もはや体はボロボロだが、ここまで来たらとにかく一刻も早くゴールしたいという気持ちが強くなっていました。

この第9エイドからは、ありがたいことにこれまでのどこよりもフラットで進みやすい区間でした。かなり平坦も長く、走ったり歩いたりを繰り返し、多少ペースを取り戻しました。

しかしこの第9エイドと最後のエイドとなる第10エイドの間隔も大会中2番目に長く、さらに孤独なナイトランということもあり、果てしなく長く感じるセクションでした。

何度かマーキングを見失い、しばらくルートを探し回るということもあり、タイムをロスします。しかし何とかコースを見つけ出し、ついに最後のエイド第10エイドへたどり着きます。

第10エイドのスタッフは全員爆睡していました。私が着いたのが深夜1時過ぎだったかと思います。4人のスタッフが「ぐおーぐおー」といびきをかいて寝ています。
起こすのも悪いのでそのまま行こうかと思いますが、いやここでチェックせずにショートカットしたと誤解を招いてもよくないので、「エクスキューズミー」と恐る恐る声をかけると
「おー!!ソーリーソーリー!!」と
一人が飛び起きてきて、ICチップをチェック。 コースを教えてくれます。

ゴールまではあと5㎞。もう完走は間違いありません。かなり眠くなってきており、とにかく早くゴールしたい一心で突き進みます。しかしその心をへし折るかのように、最後ゴールの町センバルンへ下る下りは、最悪に荒れ果てた下りづらい難しい下りです。

段差が1m以上あるような場所が何か所もあり、何度も手を使って岩を下りおります。あまりにテクニカルで走ることは全くできません。何度も何度も転倒しかけながら、必死に耐えながら下ります。ゴール地点の明かりは見えているのに1時間以上たどり着くことができません。

心身疲れ果てて、やっとの思いでとどめの下りを下りきると、畑の中の林道を進み、ついに、ついにゴールのセンバルン村に出てきました。

もう精魂尽き果てて、やったぞー!!というような喜びの気持ちさえあまり湧いてきません。
とにかく無事にたどり着けた安堵感とやっと終われるという気持ちが押し寄せます。

100㎞私を支え続けてくれた トレランポール13.6Proを掲げながら、ついに待望のゴールアーチをくぐります。

おそらくこのコースは世界一厳しい100㎞ウルトラトレイルだと思います。
3726mまで登る最高標高の高さ、そして暑さや下りの難しさ、総合的に見て、他に類を見ない厳しいコースでした。

しかし、そんな厳しいコースを最後まで走りきれたのは、SINANOのトレランポールなくしては絶対になしえることができませんでした。

待望のゴール、100㎞獲得標高9200mは本当にすごいコースでした!
ここまで支えてくれた SINANO トレランポール13.6Pro ありがとう!

ゴールタイム:29時間21分47秒
結果: 総合5位 

【 トレランポール13.6 Pro 使用インプレッション 】

非常に軽量で、この厳しいコースでの使用に非常に効果的でした。
現在3つ折りポールがほとんどの中、4つ折りのため、普段今までブラックダイヤモンドのポールで使用していたフォルダーが使えず、その点は苦労した。
ぜひ3つ折り使用のものを出してほしいと感じました。
各メーカーほとんど3つ折り使用のため、バックメーカーのストックホルダーが3つ折りの長さに合わせて作成されているものが多く、4つ折りの場合それらのストックホルダーに適応せず、それが理由で販売数が伸びない可能性を懸念します。
3つ折りのほうがジョイントが少なく、さらなる軽量化ができるのではないでしょうか?

ストラップの長さ調節がマジックテープのため、今一つホールド感や調整の融通が利かず、惜しい点と思います。ウルトラトレイルではグリップ握りしめるというよりはこのストラップにウェイトを駆けるので、個々のホールド感と長さ調整は非常に重要なポイントです。
ストラップはカーボンポールに付属しているもののほうが好みです。
もう1種ご用意いただいたカーボンポールと13.6を比較した場合、13.6ポール先端側の重量が軽く感じるため、実際の重量差以上に軽さを感じることができました。カーボンポールは先端部分のウェイトが重く感じ、降った際に重さを感じますので、なるべくポール先端部分の軽量化を強化すると、実際の重量以上に使用感は軽く感じます。

【 株式会社ユーレックス 】

レポートをお送り頂いた 株式会社ユーレックスの久保様。
海外トレイルランニング参加ツアーを企画されています。

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ユーレックス   

 

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