障がい者スポーツ支援
SINANOでは、
パラ卓球「肢体不自由者」カテゴリーで
活躍するアスリートを応援しています。
今では選手の「第3の足」として
共に戦うポールが、
いかにしてパラ卓球と出会ったのか、
SINANO100余年の技術が
どのように選手の身体を支えているのか。
実際に活躍する2名の選手にお聞きしました。
小学校の時の選択授業で、最初は嫌々でした。あの頃はバスケ・水泳・サッカー、もちろん運動会も、足を使う競技では絶対に友人たちに勝てなくて、運動が段々と楽しめなくなり、図書室にこもりがちになったり。
そんな中、スピンをかけたり自分でも工夫すれば勝てるとわかった卓球に、段々と楽しくハマっていく自分がいました。パラ卓球のことを知ったのはその後、中学時代の部活で訪れた近所の体育館に掲示されたポスターでしたね。
まさにパラ卓球のスローガンである「不自由はある。不可能はない。」だと思います。努力して、練習して、やっと取れた一本。障がいを乗り越えた、その一瞬の瞬間芸術とも呼べる時間が最大の魅力です。
自分自身、初めての国際大会で自分より重い障がいの人がプレーする姿を見て、すごく感動したことを今でも覚えています。見て貰えばきっと何か感じてもらえるものがあるはず。あの瞬間に心が動いた自分のように、プレーを通して誰かにその一瞬の感動を伝えたいと思っています。
コロナ禍で卓球場が閉まり、練習ができなくなってしまった時期がありました。「今できることは何か」「どうしたら技術を上げられるか」というのを考えたときに、ポールを使うという選択肢にたどり着いて、プレイスタイルの変更に至りました。
自分の場合は、技術を上げるために課題となるのはこの足。自分の足をいかに安定させるかを考える中で、ふと「杖」が思い浮んだんです。電車での移動中でしたね。その場で「スポーツ・杖」で調べて「SINANO」を見つけ、次の駅のホームではもう電話をかけていました。自分でも行動力があった瞬間だと思います。スキーも杖も製造できて会社の歴史もある。安心感があったことを覚えています。
ポールを置く位置を変えることで、自分の体をコントロールできるように研究をしています。体の安定度合が高まることで、ラリーで返せる回数が増えた。増えてきてもこちらもしっかりと返せる。カウンターを狙って攻めるなど、出来ることが増えていきました。
でも最初は杖もポールも使ったことが無かったから「これを試そう」ができなくて苦労しましたね。パラ卓球で杖を使用している方はいても、立つための体を支える目的で使う方がほとんど。スポーツのための技術向上の道具として使う方はいなかったので、誰もわからない。何がわかっていないかがわからない状況からのスタートだったので、感覚を掴むのに半年、カタチになるのに1年程かかりました。
複数を使わせていただきましたが、持ちやすさと軽さで今のポールにたどり着きました。もっと握りやすいモデルもありましたが、握りやす過ぎて、プレー中に余計に握り込んでしまう。そうすると腕や体の他の部分も緊張してしまい次の動作が遅くなってしまうんですね。
卓球は相手と2mない距離に立ちますが、球速は時速150kmに近く、ボールの到達時間が球技の中で一番短いと言われています。パっと動くためには力を入れず、筋肉を弛緩させている必要があり、緊張から弛緩への1工程を減らすことが障がいの度合いに関係なく、大切な事だと考えています。
ポールに頼るけど、頼り過ぎない。今のモデルは、サーブ時のボールのトスもやりやすくて、よく使わせていただいています。
結果の目標としてはパラリンピックへの出場ですが、他人に可能性を提示できる人間になりたいです。立石が成功しているからやってみよう、と。その可能性を強く示すために結果を出したいと考えています。アスリートとして多くの方の協力を得ていますが、それを自分だけで終わらせずに、新たな選択肢として次に示してこそ、自分といただいたモノに意味と価値が出せると思っています。
ポールを使うこともその1つ。ボールに威力出す、安定感を出す等は自分が見つけた1つの使い方、可能性にすぎません。ポールの選択肢、意味、価値を示しつつ、自分のノウハウを示すことができれば、誰かの役に立つ可能性がきっと増えますよね。ですからポールの使い方の講座やクリニックもやってみたいことの1つです。
「僕はポールを使ってこうしたよ」それが参加してくれた方たちにスポーツの可能性や努力することの意味を伝えることに繋がり、誰かを勇気づけることができるのではと考えています。
立石 アルファ 裕一
(たていし あるふぁ ひろかず)
所属クラブ
株式会社D2C R
2023年
- サウジアラビアパラオープン
個人【優勝】
男子ダブルス【優勝】
混合ダブルス【2位】 - エジプトパラオープン
男子シングルス【3位】
男子ダブルス【3位】
混合ダブルス【優勝】 - 台湾パラオープン
混合ダブルス【3位】 - ジャパンオープンパラ
個人【3位】/混成団体【優勝】
2022年
- タイパラオープン
男子シングルス【2位】
男子ダブルス【3位】 - 全日本パラ選手権
男子シングルス【3位】
男子ダブルス【3位】
ミックスダブルス【2位】
中学の部活ですね。生まれつき足が悪いながらも体を動かすのは好きで。吹奏楽なども見学はしましたが、スポーツをやってみたかったんです。親に内緒で黙って入部したので、後からすごく驚かれました。
間もなく近所に出来た卓球場が1回200円で自由に空いている台が使えて、そこがまた楽しくて。毎日よく通いましたね。そこに通い始めたのが、もっともっとやりたいという気持ちの原点、卓球に夢中になった始まりです。ただ、練習後に繰り返し出る、体と足の痛みとの闘いでもありました。
高校では東海選手権大会まで出場しましたが、親には痛みで動けなくなった私を迎えに来てもらったり、随分と心配をかけました。短大を卒業後は仕事に集中、体調管理をするべく卓球からは離れることを決めました。
始めたきっかけは、46歳の子育てがひと段落した頃、また何かスポーツをやりたいと思っていたときに、ろうあの方から勧めていただきました。
さっそく、全日本パラを見に行ってすごく衝撃を受けたんですよ。自分よりも障がいの重い方が、自分よりも良いプレーをしている。卓球を健常者の世界でしか見てこなかった私にとっては、体幹の取り方、技術、どれをとっても目からうろこでした。自分が不可能だと思っていたことをやられている方がいる。パラ卓球って障がいを含めたその人の持っている機能が最大限に生かせる場所の1つだと思います。そういうことを一切感じさせないプレーをする方たちとお会いして、感銘を受けたことを覚えています。
この卓球を極めていけば自分の技術ももっと上がる、そんなことを考える出来事でしたね。家族からは足が痛くなることを心配もされましたが、大人になったし自分の体は自分でコントロールする、そんな気持ちでパラ卓球に取り組むようになりました。
最初は昔のスタイルのままポールを持たずに始めたのですが、2018年頃に次の大会を一週間後に控えたタイミングで、もう本当に歩けないというくらいに足を痛めてしまったんです。もう卓球をやるのが本当に大変で。
そのときに腕で体を支えるクラッチタイプの杖を試しに買って、卓球で持ってみたら普通に出来ちゃいまして。案外に具合が良かったのが杖を使い始めたきっかけです。
良かったのはそれだけでなく、圧倒的に練習量を増やせるようになったんですよね。だめなときは練習を始めて10分で痛みだす足が、杖を使うと2時間いける。練習量が増やせたことで技術的なことだけじゃなく、杖の使い方の研究も始めました。
2023年になってからですね。それまでは杖、腕で支えるクラッチタイプを使用していました。数年クラッチで卓球をしていましたが、グリップ位置が低いからバックを打とうとすると腕が体の前でクロスしてしまって届かない。クラッチを持つ自分の肘と腕が邪魔でバックが打てないという、プレイスタイルとしては設計ミスの状態になってしまっていました。
監督やコーチに相談する中で、グリップ位置を高くすれば腕と体の間に空間をつくれることがわかり、普段の生活でも使っていたノルディックウォークタイプのグリップで、海外遠征にも持っていけるコンパクトな機構。そんな商品を求めて見つけたのがロングトレイルでした。
使ってみた感想としては、狙い通りバックに対応ができるようになりました。背が低くリーチが短い私の欠点が、ポールによって広範囲を取れるように変わり、みんなからも「穴がなくなったような気がする」「狙っていいところが見えなくなった」と言われるようになったことが嬉しかったですね。
特に気に入っているのはグリップの部分。ストラップの下から手を通して握り込む、あの持ち方が好きで。私はラケットもトスも右手しか使わないスタイルなので、左で持つポールには持ちやすさを重視しました。
今では競技用として1つの大事な卓球道具になっています。
パラリンピックの出場を目標にしています。現在はパラ卓球のカテゴリーでclass10という立位のクラスにいますが、ここは上肢障がいの方が多く、フットワークの取れる選手ばかり。パラリンピックはもちろん、オリンピック経験者までいるクラスなんです。
下肢障がいの私がそこで戦うのは、自分自身、本当に挑戦だと感じています。足が悪くてもclass10に挑戦していくためには、フットワークに変わる何かを手に入れる必要があります。私のポールの使い方、ポールワークの部分については、まだ不完全だと感じていますが、自分の特性や武器が掴めるまで模索していきたいと思っています。
そして、そんな私を見ていただくことで、ポールを使った卓球を1つのスタイルとして知ってもらえるようになりたいですね。健常者の方もいつ事故や病気で障がい者になるかわからないと思うんです。1つのスタイルとして、杖やポールを使うことでのびのびと卓球ができる。選手にならなくても、健康づくりを目的としても取り組むことができる。卓球はこんな楽しみ方もあるんだよ、っていうのをみなさんに知っていただきたいなと思っています。
山崎玉乃(やまざき たまの)
所属クラブ
積志卓球クラブ
2023年
- ギリシャパラオープン
女子シングルス【3位】
女子ダブルス【3位】 - ジャパンオープンパラ
個人【3位】
団体戦 立位の部(女子)【優勝】
2022年
- タイパラオープン
女子シングルス【3位】
女子ダブルス【2位】 - チェコパラオープン
女子シングルス【3位】 - 全日本パラ選手権
女子シングルス【2位】
立位女子ダブルス【2位】
ミックスダブルス【優勝】